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障害福祉

BCP策定義務化ってどんなものなの?

2024.05.24

 

みなさん、こんにちは。突然ですが、みなさんは「BCP」という言葉をご存じでしょうか。
BCPとはBusiness Continuity Plan(事業継続計画)の略で、大規模な自然災害やパンデミックなどの異常事態が発生した時でも、事業を継続することができる体制を整えるための計画を言います。

 

このBCPの策定が、令和6年度から障害福祉事業所でも義務化されました。つまり、今年4月以降、障害福祉事業所でもBCPを設けなければならない、ということです。今回は障害福祉事業所におけるBCPの策定義務についてお話していきます。

 

 

BCPの中身について

 

前述の通り、BCPとは感染症や自然災害に備えた事業継続計画のことを指します。
大地震などの災害時には、通常の業務を実施することは困難となります。この場合、迅速な復旧も重要ですが、それと同時に「事業を中断させない」ということも重要です。BCPはこの「事業を中断させない」ことに力点を置いた計画です。すなわち①事業の活動レベルの落ち込みを小さくし②復旧に必要な時間を短縮する、というのがBCP策定の一番の狙いです。

 

BCP策定において重要な取り組みは

① 各担当者を事前に決めておくこと(誰が、いつ、何をすべきかを事前に決めておく)
② 担当者の連絡先をあらかじめ整理しておくこと
③ 必要な物資をあらかじめ整理、準備すること
④ これらの情報を組織で共有すること
⑤ 計画を定期的に見直し、必要に応じて訓練、研修などを実施すること

 

などが挙げられます。
そしてこれらの取り組みを踏まえたうえで、BCPを具体的な策定・運用する際には、以下の4つのポイントを押さえておく必要があります。

① 正確な情報集約と判断ができる体制の構築すること
② 自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」とに分けて、同時にその対策を準備すること
③ 業務の優先順位の整理すること
④ 計画を実行できるよう普段から周知、研修、訓練を行うこと

 

障害福祉事業所の利用者は日常生活、健康管理、場合によっては生命維持に関しても、その多くの部分を事業所が提供するサービスに依存しています。

たとえ大災害などが発生した場合であっても、サービス提供が中断されてしまうと、利用者の健康や生命の危機に直結する恐れも生じます。このため、障害福祉サービスにおいては、他の事業と比較しても、事業中断を防ぐBCPの策定は非常に重要なものとなります。

 

 

 

 

BCPを策定しないと減算される

 

このようにBCP策定は障害福祉事業所にとって非常に重要なものですが、もしこれを策定しなかった場合、事業所が受け取れる基本報酬が減算されてしまいます(「業務継続計画未策定減算」といいます)。

具体的には療養介護、施設入所支援、共同生活援助、宿泊型自立訓練、障害児入所施設については基本報酬の3%
それ以外のサービス、例えば居宅介護、重度訪問介護、生活介護、自立生活援助、就労移行支援、 就労継続支援、就労定着支援、計画相談支援、障害児相談支援、児童発達支援などは基本報酬の1%が減算されてしまいます。

1~3%の減算といっても、基本報酬からこの割合が減算され、それが何カ月も続いていけば、事業所の運営に大きな支障をきたす恐れがあります。BCP未策定は災害などの緊急時に事業所を危機に陥らせるだけでなく、普段の経営にも大きな影を落とすことになるのです。

 

 

令和7年3月31日までは経過措置あり

 

ただし、実際のBCP策定がまだ十分行き届いていない現状も踏まえ、業務継続計画未策定減算については、一定の経過措置が取られています。

具体的には令和7年3月31日までの間は、「感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備」及び「非常災害に関する具体的計画」の策定を行っている場合は、減算が適用されないこととなっています。

また、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、自立生活援助、就労定着支援、居宅訪問型児童発達支援、 保育所等訪問支援、計画相談支援、障害児相談支援、地域移行支援、地域定着支援については、そもそも「非常災害に関する具体的計画」の策定が求められていないことから、令和7年3月31日までは減算は適用されないこととなっています。

(厚労省資料「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」より)

 

ただし、令和7年3月31日を過ぎると、これらの経過措置もなくなり完全に義務化されることとなるため、これ以降の未策定は、いよいよ減算の対象となってしまいます。

つまりまだ策定できていない事業者は令和7年3月末が本当のタイムリミットです。

もし、現在もBCP策定が完了していない場合は、早急に対応することが望ましいでしょう。