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障害福祉

処遇改善加算の仕組みについて

2024.05.22

 

みなさん、こんにちは。今回は障害福祉事業所の報酬にかかる加算の中でも、制度が複雑な処遇改善加算について、お話していきたいと思います。

処遇改善加算は正式名称を「福祉・介護職員処遇改善加算」といい、障害福祉事業所で働く職員の給与などの処遇を改善することを目的に作られた制度です。もともとは加算ではなく、補助金として支給されていましたが、依然として他業種との賃金格差が大きかったため、更なる処遇改善のために加算制度に組み込まれました。

この処遇改善加算は令和6年6月から内容が大きく変更されます。どのような点が変わるのかも含めて、これから簡単にご説明していきます。

 

新しい処遇改善加算について

 

従来の処遇改善加算は、通常の「処遇改善加算」と、「特定処遇改善加算」、「ベースアップ等支援加算」の3種類に分かれていました。

通常の「処遇改善加算」は加算対象となるホームヘルパー、生活支援員などの福祉職員全体の賃金改善を目的としており、要件に応じて加算ⅠからⅢまでの3種類あり、数字が若くなるほど、加算率もアップします。

これに対し、「特定処遇改善加算」は勤続10年以上の介護福祉士など、経験や技能が豊富な「中核的人材」の賃金改善を目的としたものです。

「ベースアップ等支援加算」も職員の賃金改善を目的としていますが、その対象がヘルパーなどの福祉職員だけでなく、管理者や事務員などの福祉職員以外の職員にも認められている点が特徴です。

従来はこれら3種類の加算を組み合わせて、全部で18パターンの加算のいずれかを取得することになっていました。

しかし、制度が複雑すぎるといった声や、より一層の加算を求める声もあって、令和6年6月から「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つの加算を一本化し、全体の加算率もさらに向上させるという改定が行われました

この結果、新しい処遇改善加算は加算ⅠからⅣまでの4種類となりましたが、非常に大きな制度変更であったため、激変緩和措置として、令和6年度中はこれ以外に加算Ⅴ(1)~(14)を設け、ひとまずは従来の加算率を維持しながら、新加算への移行ができるようになされています。(下図も参照のこと)

 

 

 

 

処遇改善加算の要件とは

 

こうした大きな変化を迎えた処遇改善加算ですが、加算を取得するためにはどのような要件を満たす必要があるのでしょうか。新しい処遇改善加算の取得要件は、大きく次の3つがあります。

 

① キャリアパス要件
事業所で働く職員のキャリアパス、つまり各職位の任用や昇給、賃金体系、研修制度などを整備し、明確に定める必要があるという要件です。

キャリアパス要件はさらに要件ⅠからⅤまでの5種類があり、どれだけの要件を満たすかによって、処遇改善加算の加算率も変わってきます。

 

② 月額賃金改善要件
職員の月額賃金を一定額以上改善させなければならないというのが、月額賃金改善要件です。

これには2種類の要件があり、要件Ⅰが新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を月給の改善に充てるというもの、要件Ⅱが前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善を行うというものです。

 

③ 職場環境等要件
職場環境等要件とは、職場の生産性向上や、職員の資質向上・キャリアアップに向けた支援など、職場環境の改善に向けた取り組みを6つの区分に分け、各区分につき、1つないし2つ以上(生産性向上は2つないし3つ以上)取り組まなければならない、という要件です。

取り組んでいる施策の数によって、加算の大きさが変わってきます。

 

これらの要件については、令和6年6月からいきなり変更されるのではなく、一部は従前の要件を維持したまま、又は特例による要件緩和などの激変緩和措置が取られ、令和7年4月から完全に新加算の要件に切り替わることとなっています。

 

 

 

 

処遇改善加算の注意点

 

処遇改善加算を実際に受け、職員に給与として分配する際には、以下の点を注意しなければなりません。

 

① 処遇改善加算として支給された加算額を「超える」賃金改善を実施すること
事業所は処遇改善加算で支給された加算額を超える賃金改善を行わなければなりません。

たとえば処遇改善加算として200万円の支給があった場合は、たとえ1円でもそれより多く賃金の改善に充てなければなりません。

処遇改善加算の支給額以下の賃金改善であった場合は、不正請求として処遇改善加算で支給された全額が返還対象となってしまうので、注意が必要です。

 

② 対象職種となっている職員に分配すること
処遇改善加算は福祉・介護職員を対象とした加算であり、事業所にいる全ての職員を対象としたものではありません。

具体的には、ホームヘルパー、生活支援員、就労支援員、児童支援員、保育士、介護職員などが支給の対象となる職種です。

このため、事業所の管理者や、サービス管理責任者、看護師、事務員、調理員などは対象外となるため、この人たちに処遇改善加算で支給された加算額を賃金に充ててはいけません。

ただし、対象職種を兼務されている場合は、分配の対象となります。

 

③ 対象職員に平等に分配しなくてもよい
処遇改善加算は全ての福祉・介護職員の賃金に平等に分配する必要はありません。

分配の方法は各事業所で決定することができ、職階に応じて分配額を変えることも、賞与として支払うことも、職員1人だけに全額支給することも可能です。

 

 

処遇改善加算については、厚生労働省のホームページにも改正内容などが詳しく説明されております。そちらもどうぞご参考ください。