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障害福祉

就労選択支援ってどんなサービスなの?

2024.05.27

 

みなさん、こんにちは。今回は令和7年10月からスタートする新サービス「就労選択支援」について、簡単にお話していきたいと思います。

障がい福祉の就労系サービスにはこれまで「就労移行支援」、「就労継続支援A型」、「就労継続支援B型」、「就労定着支援」の4種類がありましたが、これに今回「就労選択支援」というサービスが追加される予定です。

この「就労選択支援」とは一体どういうサービスなのか、ほかのサービスとも比較しながらお話していきたいと思います。

 

 

「就労選択支援」とは

 

就労選択支援とは「障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や 適性等に合った選択を支援するサービス」のことです。
(厚労省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」より)

要するに、障害をもった方が、自分に合った勤務先や働き方を、本人の希望を聞いたり能力を調べたりして一緒に探し、選択するための支援を行うサービスのことを言います。

就労先を探すサービスには、従来「就労移行支援」というものがありました。しかし、就労移行支援が主に一般企業への就労に向けての知識や技能習得、職場への定着を支援するサービスなのに対し、就労選択支援はより幅広く就労継続支援A型やB型の作業所への入所も含めて、障がい者本人にとって、最もふさわしい就労先を探す支援をするサービスとなっています。

 

 

「就労選択支援」利用のタイミング

 

原則として、これから就労系サービスを利用しようと考えている人、例えば就労継続支援B型作業所に入所しようと考えている障がい者の方などは、そのサービスの利用申請前に、まず就労選択支援を利用する予定となっています。

つまり、選択就労支援を利用することで、初めて自分が利用する就労系サービスが決定するというプロセスです。

また、すでに就労継続支援B型などの就労系サービスを利用していて、今後利用の更新を考えている障がい者の方も、本人の希望で就労選択支援を利用することができることになっています。

なお、就労移行支援の利用者については、令和9年4月以降は原則として更新申請前に就労選択支援を利用する予定となっています。

 

 

「就労選択支援」サービスの実施要件

 

就労選択支援サービスを実施する事業所となるためには、以下の要件が検討されています。

・障がい者就労支援に一定の経験・実績があること
・その地域の就労支援機関や一般企業の雇用状況等を的確に把握し、適切な情報提供ができること
・過去3年間において3人以上、通常の事業所に新たに障がい者を雇用させている事業者であること 等

まだ現在は検討段階ですが、上記内容からおそらく実施主体となる事業者は、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、障がい者就業・生活支援センター事業の受託法人など、すでに実績のある事業所が中心になると思われます。全く未経験からの新規参入は難しいことになるかもしれません。

 

 

「就労選択支援員」の配置

 

就労選択支援事業所には「就労選択支援員」を配置することが検討されています。就労選択支援員は実際に利用者と接し、コミュニケーションをとりながら就労先の選択を支援することになるので、その質の担保が必要となってきます。

そこで就労選択支援員になる要件として「就労選択支援員養成研修」の開始が検討されています。

ただし、養成研修開始当初は十分な研修機会が得られない可能性があることから、養成研修開始から2年以内に受講を修了すればよいという経過措置が検討されています。
(養成研修開始から2年間は基礎的研修又は基礎的研修と同等以上の研修の修了者を就労選択支援員とみなす、という要件の緩和措置)

 

 

「就労選択支援」事業所の責任

 

就労選択支援サービスは、これから働こうとする障がい者の方の将来を決定する重要なファクターとなります。このため、就労選択支援事業所には高い透明性や社会的責任が要求されます。

その具体的な表れとして、就労選択支援事業者には中立性の確保を求めることが検討されています。

中立性の確保とは、サービス利用者を企業などに就労させる際に、一部に偏った就労にならないよう求めるものです。例えば次のような禁止事項を定めることが検討されています。

 

・自分たちの法人が運営する就労系サービスへ利用者を誘導しないこと
(介護保険の居宅介護支援における特定事業所集中減算等を参考とした仕組み)
・必要以上に就労選択支援サービスを実施しないこと
・障害福祉サービス事業者からの利益収受を禁止すること

 

 

 

 

「就労選択支援」スタートの背景にあるものは

 

このように令和7年10月からスタートする予定の就労選択支援ですが、そもそもなぜこのようなサービスが生まれることになったのでしょうか。

前述のように、従来から働く意思のある障がい者の方を就労につなぐサービスというものはありました。しかし、これまでの制度では就労先を選択するためのアセスメント(対象者の状態や問題点を客観的に評価する取り組み)が業務として法令上位置づけられておらず、必ずしも十分なアセスメントが行われずに選択されてしまうケースがありました。

また従来は、一度就労継続支援A型、B型の利用が始まると、そのサービスに固定されやすいという傾向もありました。例えば、利用者の本来の意思や能力をきちんと評価すれば、一般就労への移行が可能だったり、逆に一度就労から離れたりする必要がある場合にも、これまでは適切にそれを検討し実行に移す機会が限られており、なかなか次のステップに踏み切れないという状況もありました。

今回就労選択支援サービスが始まることになったのは、このような不十分で膠着した状況を改善し、障がい者の方が、より的確に、適切に自分の働く場所や働き方を見出せる環境を作っていこうという点にあります。

まだ検討されている項目の多いサービスですが、今後の障害福祉事業の発展につながるサービスになることを願うばかりです。